From CEO

第2回 国別進出難易度
〜インド・アジア諸国進出難易度ランキング〜

アルベリーアジア代表(CEO)の増井哲朗です。


第二回目は海外進出の「国別難易度」について話したいと思います。
私が今までに関わってきた、インドを含むアジア諸国への進出の難易度を、私の経験からランク付けしてみました。


一番難易度が高いランクを10点とします。結論から言いますと、一番易しいタイが3.5点、一番難しいインドが9点、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピンなどが6点前後に固まります。中国は最近の尖閣問題で6点グループから7点辺りに移行したと考えています。


皆様が海外進出を考え、立地を検討する場合、いろいろなパターンがあります。
日本での主要取引先から、「進出して欲しい」と言われて、あらかじめ進出国が決まっている場合があります。このケースでは、当該国でいかに成功を掴むかを考えれば良いので、かえって悩まずに済むというメリットがあります。
なにより、主要顧客からの招請ですから、安心感があります。


通常は、いろいろな国を比較均衡して、進出適地を考えます。
そうした場合のことを想定しながら、難易度の具体的な話を進めていきます。


まず、経営者の方が検討する場合は、当然、事業の収益性を第一に置きます。
その収益性の検討の過程で、各部門に検討課題が出されます。
また、「プロジェクトチーム」が編成されることもあるかと思います。


営業部門では、その国での当該商品・サービスの市場調査は欠かせません。
市場の大きさや成長性、競合先の動向も気になります。


総務部門では、その国の法律関係の整備が気になります。不動産などの取得は円滑に行くのだろうか、やはりアジアだからアンダーテーブルも必要かも・・・。


人事部門では、労働力の質・量の問題に加えて、労働組合の問題は無いのか、あるとすれば、その対策はどうする。また、派遣する社員の安全の確保は言うまでも無く、絶対条件となります。


各部門は専門部門的な視点から検討して、チームとしての、まとめに入ります。


この課程の中で、時々、大前提の確認が忘れられてしまうことがあります。
それは、詰まるところ、「海外進出というのは、異文化の中での経営・事業展開」だというごく当たり前のことの確認です。


私がインドに9点をつけたのは、そのことと関係があります。
インドの文化、カルチャーは日本の対局にあると考えて良いと思います。
5年あまりで、66回のインド出張をこなした私が痛切に感じたことです。
誤解があるといけないので、付け加えると、これは良いとか悪いとか言う問題ではなく「異文化」だと言うだけのことです。


それでは、タイの3.5点は何かと言えば、まず、各国との比較の中で、決定的な欠点(×)が無いということです。例えば、人件費で言えば,インドやベトナムの方が安いのですが、マレーシアや最近の中国よりは安価だと言えます。各国を○×△で比較していくと、タイが全ての点で「中庸」であることに気づくと思います。
昨年の大規模な水害にしても、被災された方には気の毒ですが、工業団地の多くは無事でした。その意味では,評価は△でとどまるのではないでしょうか。
とにかく、タイ人には、日本人に対する悪感情というものがありません。
加えて、仏教国であり、インドの場合と違って、馴染みやすい「異文化」と言えます。
これが、私がタイに3.5点をつける理由です。


最初の海外進出であれば、タイを選択して、そこで、経験を積み、実力をつけて近隣諸国に出て行くというのが、現実的なように考えます。
ただ、○×△の比較の中で、ある一点の意味が特別に大きな場合、たとえば、オートバイの関連部品のような産業では、マーケットの大きさから、最初からインドネシア、ベトナムへの進出も視野に入れると良いと思います。


私がお願いしたいのは、海外進出を考える時に、マスコミで伝えられる情報を鵜呑みにすることなく、冷静に自社の強みを活かせる戦術を考えること、「異文化の中での経営」に挑戦するのだという気概と覚悟を持って、総合的に検討を進めていただきたいということです。


今回はこの辺りで失礼をいたします。
第3回は11月中旬に掲載させていただきます。

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