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第34回 タイ人従業員に会社(タイ拠点)を譲る

アルベリーアジア代表(CEO)の増井哲朗です。

現在のコロナ禍の中、会社(タイ拠点)の今後について悩まれている経営者は多いのではないでしょうか。大きな赤字が出ているわけではないが、当初計画の利益には届かないし、将来の見込みも確実ではない。このままで良いのかという自問に繋がります。

清算は容易ではない

以前も、このブログで書きましたが、タイでの会社清算はコストと時間が掛かります。特に時間という観点では、税務署の監査が終わり清算完了通知を受領するまでに、着手してから3年掛かると覚悟していて間違いありません。

もし、税務監査でなにか指摘事項があれば、その対応にさらに時間をとられるという事態も考えられます。

したがって、もし、タイからの撤退を考える場合には、できる限り清算ではなく、株式譲渡など、会社を売却する方向で考えた方が得策です。

このケースの中で、最近、表題の通り、タイ人従業員に会社を譲るというケースを複数例、経験したのでそのポイントを書いてみたいと思います。会社の処分の仕方として検討する価値はありそうです。

会社を「どのように」譲渡するか

まず、最大のポイントは会社を従業員に譲渡した後の、日本本社の関わり方を明確にすることです。その度合いは、譲渡後は全く口を出さない、言い換えれば丸投げして関わりを絶つというやり方から、従業員をトップにして日本人は全て引き上げるが、従前通り日本本社との関係は維持していきたい、月次決算なども定期報告させたいという考えまで、幅広いものとなります。

日本本社の関わり方が明確になると、新体制の構築がやりやすくなります。

株式を譲るのかどうか、取締役の構成をどうするか、顧客への周知の仕方をどうするか、会社商号・商品ブランドの使用を継続して認めるのか、品質・納期問題などが発生した場合にどう対応するか等々が見えてきます。

従業員のメリットは?必ず合意文書の作成を

元々、信頼できる、能力のある従業員だから、会社を任せてみようと考えるわけですが、顧客のほとんどが日系企業という場合に、日本人が不在で、加えて日本語能力が不十分で果たして顧客基盤を維持できるのか等々、実際の運用に当たっては、解決しなくてはならない問題は数多くあります。また、従業員側に立って、経営の任に当たるメリットはなにか、インセンティブはなにかを考える視点も重要となります。

本案を採用するとすれば、相互の意思確認のために、確認書や覚書の類を作成しておくことは将来の揉めごとを防ぐ意味で必須であると思います。また、作成過程でお互いの考えの細部までの摺り合わせができることも期待できます。

時間的な余裕が十分あることを前提として、会社の清算に代わる方法として、本案を検討しても良いのではないかと考えて書いてみました。参考になれば幸いです。

ではまた。

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